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人生を捧げられる仕事|三浦しをん「舟を編む」

人生を捧げられる仕事|三浦しをん「舟を編む」

2024.03.29

#小説

#本屋大賞

書名:舟を編む
著者:三浦しをん
出版:2011年9月17日・株式会社光文社
ページ数:259頁(単行本)
amazonhttps://amzn.to/4aeqqpG

好き:★★★★★
こんな人におすすめ:言葉が好きな人、仕事に意味を感じられない人

どんな本?

新しい辞書「大渡海」の編集メンバーとして、辞書編集部に異動してきた馬締。名は体を表すと言うように、「真面目」な印象を与える彼が、不器用ながらも熱を込めて辞書づくりにはげむ10数年を描いた物語。そして、一冊の辞書を作るのに、こんなにも多くの人が携わっているのか、と驚愕すること間違いなし。読み終えたら、ぜひあなたの好きな言葉をお手持ちの辞書で調べてみてください。

読んだきっかけ

実家の本棚で見つけて。そういえば、今ドラマやってるし、久しぶりに再読してみるかと思った。

感想

やっぱり、いいな〜。

三浦しをん節が強くて読んでいて楽しい。地の文、三浦しをんの声で再生されてしまう(と言いつつ、私は彼女の声を耳にしたことはないのですが…)。ところどころに現れるおかしなやり取りに笑いが堪えきれません。近くにいた親に、怖いから笑わないでと言われてしまった。

高校生のとき?大学のときも読んだかな、何度か読んでいるこの本。前までは「辞書作りって面白そう。泊まり込みで作業とか、なんか働いてる!って感じでいいな。こんな大人になりたい〜!」と思っていたけれど、今は「こんな風にのめり込むことができる仕事になんて、そうそう巡り会えないんだよな」と、どこか悲観的な、諦めの視点をもって読み進めてしまう。

やっぱり情熱をもって何かに取り組むっていうのは美しい。自分にできないからこそ、より憧れと嫉妬を持ってみてしまう。西岡も同じようなことを言っていたけれど、私から言わせてもらえば、彼も十二分なほどに情熱を注いでいるでしょう。私はただ毎日仕事をこなしているだけで、異動するってなっても、多分西岡ほどショックを受けないし、あんなに心を込めて引き継ぎをしないと思う。あそこまで心尽くせるものと出会えているのが、本当に、心の底から羨ましい。

でも、そういうのって、そこから離れるまで気付けないものなのかもしれない、と読了後にふと思った。やりがいとか、尽くしたいとか、そんなことは考えず、ただひたすらに取り組み続ける。そして、ついにその仕事から離れることが決定した、その瞬間に初めて、俗にいう「やりがい」のようなものに気づけるのでは。そう考えると、毎日愚痴をこぼしながらだらだらと仕事をしている自分の情けないことよ。情熱を注ぐぞ!と意気込まなくてもいいから、まずは仕事と淡々と向き合ってみるところから始めてみようかと思えた。

でも、馬締が営業部にいたまま熱中することができたかというと、そうではないのではとも思うんだよね。当の本人は、どうとも思わないかもしれないけれど。だから、自分の力が一番発揮される環境に身を置くことも、意識しなければいけないんだろうな。働くって、難しい。